断熱図鑑No.004

吹付ウレタン

Spray Polyurethane Foam

2種類の原液を現場で混ぜ、壁や屋根へ吹き付けて発泡させる断熱材。

細かな気泡が熱の移動を抑え、柱や金物の形に沿って断熱層をつくれる。一方、工場で完成した製品を取り付ける方法ではないため、原液・発泡機の設定・気温・吹付け方・完成厚さによって仕上がりが変わる。

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初期費用断熱性能燃えにくさ施工の安定性
★★★☆☆★★★★★★★☆☆☆★★★☆☆

吹付ウレタンとは?

吹付けウレタンは、2種類の原液を発泡機で混合し、施工面へ吹き付けてつくる硬質ウレタンフォーム。

液体として付着したあと、その場で膨らみ、細かな気泡を持つ断熱層になる。木材、合板、コンクリートなどへ自己接着するため、複雑な形にも沿わせやすい。

ただし、現場へ運ばれるのは完成した断熱材ではなく「原液」。発泡したフォームが完成品となるため、気温、原液温度、混合状態、吹付け厚さが品質に影響する。

吹付け後に厚さが見えていても、原液の混合不良や発泡状態の異常まで外観だけで判断できるとは限らない。吹付けウレタンは、材料と現場施工を切り離して評価できない断熱材となる。

POINT
  • 原液を現場で発泡させて断熱層をつくる
  • 気泡の中に閉じ込めたガスが熱を伝わりにくくする
  • 製品の種類によって熱伝導率や湿気の通しやすさが異なる

主な種類と違い

A種3|住宅で多く使われる低密度タイプ

A種3は、柱や間柱の間へ充填する用途に使える低密度の吹付け硬質ウレタンフォーム。

大きく発泡するため、比較的少ない原液で厚い断熱層をつくりやすい。木造住宅の壁や屋根で見かける、柔らかく削りやすいフォームの多くがこの種類となる。

JIS上の熱伝導率は0.040W/(m・K)以下。実際の製品には、これより小さい性能値を表示するものもある。

A種3は湿気をまったく通さない膜ではない。吹き付ければ防湿層まで自動的に完成すると考えず、壁構成に応じて防湿方法を決める。

A種1・A種1H|密度が高く、湿気を通しにくい

A種1は、A種3よりも密度が高い非耐力性の吹付け硬質ウレタンフォーム。A種1Hは、さらに小さな熱伝導率が規定された高性能タイプとなる。

JIS上の熱伝導率は、A種1が0.034W/(m・K)以下、A種1Hが0.026W/(m・K)以下。A種3より薄い厚さで同じ断熱性能を確保しやすい。

密度が高く、湿気を通しにくい性質を持つが、完全な防水材ではない。屋根や外壁から入った雨水を止める目的には使えない。

A種2・A種2H|住宅の壁用とは役割が異なる

A種2とA種2Hは、圧縮強さが必要となる冷蔵倉庫などを主な用途とする耐力性のフォーム。

住宅の柱間へ入れる断熱材を比較するときは、A種1とA種3が中心となる。「数字が大きいほど高性能」という順番ではない。

見積書に「吹付けウレタン」とだけ書かれている場合は、A種の区分、製品名、熱伝導率を確認する。

メリット・デメリット

メリット
  • 複雑な形へ沿わせやすい
  • 施工面へ接着して形を保つ
  • 細かな隙間を発泡で埋めやすい
デメリット
  • 厚さが均一になりにくい
  • 施工後の変更や撤去が難しい
  • 燃えない材料ではない

発泡すれば、どこへでも回り込むわけではない

吹付けウレタンは膨らむため、「隙間をすべて自動で埋める」と思われやすい。

実際には、フォームは吹き付けられた面から成長する。配管の裏側、金物と面材の間、狭い角など、スプレーが届かない場所には空間が残ることがある。

特に注意したいのが、筋交いと外側面材の間。室内側から筋交いへ吹き付けると、手前側は埋まっていても、筋交いの裏側まで充填されていない場合がある。

発泡量を増やすだけでは解決しない。吹付け方向を変える、先に薄く下吹きする、狭い部分を別の断熱材で処理するなど、部位に合わせた施工が必要となる。

選ぶときに役立つ三つの視点

平均厚さではなく、薄い部分を見る

吹付け面には凹凸ができるため、すべての場所が設計厚さになるとは限らない。

確認したいのは、最も厚い山の部分ではなく、柱際、隅、金物まわりなどの薄い部分。断熱性能は、局所的な欠損の影響を受ける。

施工中は厚さゲージなどで随時測定し、薄い場所へ追加で吹き付ける。完成後の報告書には、設計厚さだけでなく、厚さをどの位置で何点測ったかを残したい。

一度に厚く吹きすぎない

ウレタンフォームは、原液が反応して発泡するときに熱を出す。

一度に厚く吹きすぎると内部へ熱がこもり、焦げや変色を起こす「スコーチ」、ひび割れ、発煙につながる危険がある。そのため、製品の施工要領に従い、層を重ねて必要な厚さをつくる。

日本ウレタン工業協会の一般的な案内では、一層30mm以下、総厚さが30mmを超える場合は多層吹きとしている。ただし、A種3など製品によって指定厚さが異なるため、実際には採用原液の使用標準を優先する。

「接着」と「気密」を分けて考える

吹付けウレタンは施工面へ接着するが、それだけで建物全体の気密層が完成するとは限らない。

柱との境界、床との取り合い、配管貫通部、施工後に切り取った部分などには隙間が残ることがある。木材の乾燥収縮や建物の動きによって、フォームとの境界が離れる可能性もある。

気密測定の数値を吹付けウレタンだけの性能として考えず、どの材料を連続させて気密層をつくるかを見る。

選択肢になる住宅・注意したい条件

検討しやすい住宅
  • 柱間に筋交いや金物が多く、形に沿う断熱材を使いたい住宅
  • 壁厚が限られ、熱伝導率の小さい製品を選びたい住宅
  • 厚さ測定と施工記録を残せる住宅
注意したい条件
  • 見積書にA種区分や製品名が記載されていない
  • 配管や筋交いの裏側をどのように充填するか決まっていない
  • 「吹けば気密も防湿も完成する」と説明されている計画

購入前の確認と注意点

A種区分と性能値を決める

「吹付けウレタン一式」では、どの断熱材を使うのか分からない。

見積書には、製品名、A種区分、熱伝導率、施工部位、設計厚さを記載する。高性能な製品へ変更しても厚さが同じとは限らず、厚さを減らすなら断熱計算も合わせて変更する。

厚さの測定方法を決める

吹付け面の写真だけでは、必要な厚さを満たしているか判断しにくい。

施工前に、測定位置、測定点数、薄い部分の追加吹き、結果の記録方法を決めておく。施工後は、吹付け前後の写真と厚さ測定記録を受け取る。

削って柱面へそろえる場合は、削りすぎによって薄くなった場所がないかも確認する。

火気と施工後の設備工事を確認する

吹付けウレタンは可燃性を持つため、施工前に溶接や溶断を終わらせる。

施工後に火気を使う場合は、周囲のフォームを除去し、不燃材や防炎シートで保護するなどの対策が必要となる。協会資料では、火花が当たる部分から少なくとも半径1m以内のフォームを取り除くよう示している。

ダウンライト、煙突、排気筒などの熱源まわりも、機器と工法が指定する離隔を確保する。完成後に設備を追加するときまで分かるよう、吹付け範囲と防火被覆の写真を残しておく。



ひつヤギ君

吹き付ければ、隙間も気密も全部解決するの?

じギィ博士

膨らむ材料でも、スプレーが届かない裏側や材料との境界には隙間が残るぞ。見るべきなのは、泡の大きさより、薄い場所と届きにくい場所じゃ。

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