屋根図鑑No.015

粘着層付きルーフィング

Self-Adhesive Modified Asphalt Roofing Underlayment

裏面の粘着層で下地へ貼り付ける、改質アスファルト系の下葺き材。

選ぶポイントは、「穴が開かないか」ではなく「どの下地に、どう密着させるか」。

スクロールできます
耐久性破れにくさ釘穴止水性コスト
★★★★★★★★★★★★★★

粘着層付きアスファルトルーフィングとは?

屋根材の下に敷き、屋根材の隙間から入った雨水を軒先へ流す防水シート。

一般的な改質アスファルトルーフィングとの違いは、裏面に粘着層があること。剥離紙や剥離フィルムをはがしながら下地へ貼り付けるため、施工中のシートを固定するタッカー針を減らしやすい。

ただし、「粘着式なら穴が一切開かない」という意味ではない。ルーフィングを敷いた後には、屋根材や桟木を固定する釘・ビスがシートを貫通する。粘着式の強みは、シート全面を下地へ密着させ、重ね部や貫通部の水密性を高めやすいこと。

POINT
  • 裏面の粘着層で下地へ面で貼り付ける
  • 施工時の仮留め用タッカーを減らしやすい
  • 屋根材を固定する釘・ビスまでなくなるわけではない

一般的な改質系との違いは「固定のしかた」

タッカーは、大きなホッチキスのように針でシートを留める道具。通常タイプが点で仮留めするのに対し、粘着式は裏面で貼り付ける。

この違いが役立つのが、既存の屋根材を残して新しい屋根を重ねるカバー工法。化粧スレートなど、木の板のようにはタッカーを打てない面でも、対応する粘着式なら貼り付けて固定できる。

ただし、粘着層で固定するのは下葺き材。上に載せる屋根材まで接着だけで支えるわけではない。屋根材には、指定された釘・ビスなどによる固定が別に必要になる。

メリット・デメリット

メリット
  • 裏面で固定でき、施工時の仮留めによるタッカー穴を減らし易い
  • 下地へ面で密着し、風によるめくれやシート裏への水の回り込みを抑えやすい
  • 重ね部を圧着することで、シート同士の水密性を高めやすい
デメリット
  • 一般的な改質アスファルトルーフィングより材料費が上がりやすい
  • 下地の汚れ・水分・凹凸によって、粘着力が安定しないことがある
  • 強く貼り付いた後は修正しにくく、しわや位置ずれを残すと直しにくい

製品と仕様の違い

「粘着式」という名前だけでは、寿命や破れにくさまでは分からない。製品差は、次の三つに分けて見ると整理しやすい。

シート本体を支える基材

基材とは、シートの芯や補強に使う材料のこと。粘着式にも、原紙を使う製品と合成繊維不織布を使う製品がある。

粘着層は密着性を、基材は引っ張りや引き裂きに対する強さを担う。粘着式に変えたから、シート本体も必ず丈夫になるとは限らない。耐久性を重視するなら、基材と改質アスファルトを含む製品全体の構成を見る。

粘着力が立ち上がる速さ

貼り始めから強く付く製品に加え、施工直後の位置調整がしやすい「遅延粘着型」もある。

これは主に施工のしやすさの違い。すぐに付くから長寿命、貼り直せるから防水性が低い、という順位ではない。

貼り付けられる下地と下処理

新しい野地板と、風雨にさらされた既存スレートでは、表面の状態が違う。製品がその下地に対応しているかを先に見る。

接着を助ける下塗り材(プライマー)が必要な仕様なら、その費用と作業も含めて比較する。「シートだけの価格」では、実際の工事費は判断できない。

選ぶときに役立つ三つの視点

追加費用は「何を改善するためか」で判断する

新築で通常の改質系から変更するなら、まず「粘着式にする目的」を整理する。重ね部の水密性を高めたいのか、屋根材の施工仕様で必要なのか、長期耐久性を高めたいのかで、見るべき性能が違う。

特に長持ちが目的なら、粘着層の有無だけでは不十分。変更前後の製品名を並べ、基材や耐久性に関する資料も比べる。

「粘着式へ変更」と「高耐久品へ変更」は、同じ意味ではない。下地処理まで含む追加費用と、改善される性能が結び付いていれば、予算をかける理由が明確になる。

緩勾配でも、使える屋根材の範囲は変わらない

傾斜が緩い屋根では、屋根材の仕様として粘着式の下葺き材を求められることがある。ただし、粘着式を敷けば、どんな屋根材でも使えるわけではない。

屋根材には、使用できる最低限の傾斜が決められている。その範囲を外れた屋根を、下葺き材の性能だけで補うことはできない。

先に屋根材と勾配の組み合わせを確かめ、その条件で指定される下葺き材や補強方法を選ぶ。「防水シートを良くするから大丈夫」で済ませないことが大切。

カバー工法では「貼れる」と「屋根を支えられる」を分ける

既存屋根の表面にシートが付いても、その下にある野地板が健全とは限らない。

野地板は、屋根材を支え、釘やビスを効かせる板。腐って弱くなった板の強度は、上から粘着式ルーフィングを貼っても戻らない。

雨漏り歴や下地の傷みが疑われる家では、カバー工法を決める前に、下地の状態と屋根材の固定方法を調べる。傷みがあれば、補修や葺き替えを含めた判断が必要になる。防水シートのグレードを上げる話と、下地を直す話を置き換えないことが重要。

選択肢になる住宅・注意したい条件

選択肢になる住宅
  • 施工時のタッカー穴を減らし、防水層を下地へ密着させたい家
  • 化粧スレートなどの上へ新しい屋根を重ねるカバー工法の家
  • 屋根材の施工仕様で、粘着式の下葺き材が指定される家
注意したい条件
  • 既存屋根に粉化・汚れ・水分・大きな凹凸が残っている
  • 寒冷時や高温時など、粘着力と施工性が変わりやすい環境
  • 雨漏り歴があり、野地板の傷みを調べずにカバー工法を進める計画

メンテナンスと注意点

貼る前の清掃と乾燥で性能が変わる

粘着層は、ほこりや水分の上からでは下地へ十分に密着しない。

特にカバー工法では、既存屋根の表面にコケ、砂、塗膜の粉、割れた破片が残っていることがある。清掃し、濡れている部分を乾かし、段差や浮きを直してから貼る。必要な下地処理は、使用する製品の施工要領に合わせる。

しわと空気だまりを残さず圧着する

剥離紙やフィルムを一度に大きくはがすと、シート同士が貼り付いたり、しわや空気だまりが残ったりしやすい。

位置を合わせながら少しずつ貼り、中央から外側へ押さえて密着させる。重ね部、端部、谷、壁際は特に浮きが残りやすいため、指定された重ね幅と圧着方法を守る。

塗装では更新できないため、施工記録を残す

完成後の屋根写真では、使用したルーフィングも、その施工状態も分からない。

新築や葺き替えでは、次の写真が役立つ。

・谷・壁際・天窓まわりなどの接合部

・製品名が読める包装やシートの印字

・屋根全体に敷き終えた状態

ひつヤギ君

長持ちさせたいなら、粘着式に変えておけばいい?

じギィ博士

粘着式は、主に貼り方の違いじゃ。長持ちが目的なら、変更前後の製品そのものを比べるんじゃよ。「何に効く追加費用なのか」が分かれば、選びやすくなるぞ。

暮らしをつくる12の図鑑

HOUSE BUILDING ENCYCLOPEDIA

家づくりの知識を、ひとつずつ。

じギィ博士の研究ノート

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