構造・工法図鑑No.004

鉄骨造

Steel Construction

鋼製の柱や梁を組み、ブレースや柱梁の接合部で地震・風の力に抵抗する構造。大きな窓や長い梁を計画しやすい一方、柱脚・接合部・床の揺れ・鉄骨まわりの断熱まで確認する必要がある。

選ぶポイントは、鉄骨の太さだけでなく、ブレースかラーメンか・柱と梁の配置・柱脚・接合部・耐火被覆にある。

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間取り自由度大空間改修性品質安定性
★★★★☆★★★★☆★★★☆☆★★★★☆

鉄骨造とは?

鉄骨造は、鋼製の柱と梁を建物の骨組みに使う構造。図面では、Steelの頭文字から「S造」と表記される。

工場で加工した柱や梁を現場へ運び、ボルトや溶接で接合する。地震や風の力には、斜めに入れたブレースで抵抗する方法と、柱と梁を強く接合して骨組み全体で抵抗する方法がある。

外壁に工場製作パネルを使っていても、パネルが主構造とは限らない。一般的な鉄骨住宅では、鉄骨の柱・梁・ブレースが建物を支え、外壁パネルはその外側へ取り付けられる。

2×4工法は、木製の枠材と面材でつくる壁が構造の中心となる。鉄骨造は、柱・梁・ブレースによる骨組みが中心であり、力の受け方が異なる。

ただし、薄い形鋼と面材で壁をつくる「薄板軽量形鋼造」は、一般的な柱梁式の鉄骨造とは別の構造。見た目は2×4に近いが、枠材が木ではなく薄板軽量形鋼となり、専用の技術基準が使われる。

POINT
  • 鋼製の柱・梁・ブレースや接合部で建物を支える
  • 鉄骨の太さだけでなく、力に抵抗する構造方式が重要
  • 外壁パネルを使っていても、木質パネル工法と同じとは限らない

主な種類と違い

ブレース構造|斜材の位置が間取りを決める

ブレース構造は、柱と梁でつくる四角い骨組みに、斜めの鋼材を入れて変形を抑える構造。低層の軽量鉄骨住宅で多く採用される。

地震や風の力を受けると、ブレースには引張力や圧縮力が加わる。柱と梁だけでなく、ブレースと接合部を含めて一つの耐震要素となる。

ブレースが入る壁には、大きな窓や出入口を設けにくい。窓の拡大や壁の撤去を希望する場合は、別の位置へブレースを移すだけでは済まず、建物全体のバランスを再確認する必要がある。

完成後は壁の中に隠れるため、平面図だけでなく、ブレース位置が分かる構造図を確認したい。

ラーメン構造|柱と梁の接合部で抵抗する

ラーメン構造は、柱と梁を変形しにくいように接合し、骨組み全体で地震や風の力に抵抗する構造。

ブレースに頼らない構面をつくれるため、大きな窓、広いLDK、ビルトインガレージなどを計画しやすい。間仕切り壁の位置も比較的変更しやすい。

ただし、柱を少なくすれば梁にかかる力が増える。梁が大きくなると、天井高、窓の高さ、設備配管の通り道へ影響する。

「重量鉄骨だから大空間にできる」のではなく、柱の間隔、梁の長さ、接合部、床の変形まで計算して成立させる。

鉄骨ユニット構造|箱型フレームを工場でつくる

鉄骨ユニット構造は、柱と梁で箱型のフレームをつくり、内外装や設備の一部まで工場で組み込んで現場へ運ぶ方法。

複数のユニットを接合して一つの建物にするため、ユニット単体だけでなく、上下左右の接合部が構造上重要となる。

工場での作業範囲を増やしやすい一方、部屋の幅や天井高は運搬できるユニット寸法の影響を受ける。ユニット間の柱が重なる部分では、壁や柱型が厚く見える場合もある。

将来の増築や間取り変更では、ユニットの境界と接合位置を無視できない。一般的な鉄骨ラーメン構造と同じ感覚では変更できない。

メリット・デメリット

メリット
  • 大きな窓や長い梁を計画しやすい
  • 柱や梁を工場で加工し、寸法精度を管理しやすい
  • ブレース、ラーメン、ユニットなど構造方式を選べる
デメリット
  • 鉄骨が外壁や屋根を横切る部分で熱橋が生じやすい
  • 長い梁や軽い床では、歩行時の振動が問題になる場合がある
  • 火災時の鋼材温度を抑える被覆や壁構成が必要となる

鉄骨造は接合部と変形まで見なければ分からない

鉄骨は強度の高い材料だが、柱や梁を置くだけでは建物にならない。

梁から柱へ、柱から柱脚へ、柱脚から基礎へ力を渡す必要がある。溶接部、高力ボルト、接合金物、ベースプレート、アンカーボルトのどこかに不具合があれば、部材本来の性能を生かせない。

地震時には、部材の強度だけでなく、骨組みがどれだけ変形するかも重要となる。建物が倒れなくても、変形が大きければ外壁、窓、内装、設備配管へ損傷が出る可能性がある。

大空間では梁のたわみや床振動にも注意が必要。構造計算上の強度を満たしていても、歩くたびに床が揺れる住宅では快適とはいえない。

「鉄骨だから強い」ではなく、接合部、柱脚、変形、床振動まで確認して鉄骨造の性能となる。

選ぶときに役立つ三つの視点

ブレースで支えるか、柱と梁で支えるかを見る

最初に確認したいのは、軽量鉄骨か重量鉄骨かではなく、地震や風の力に何で抵抗するのか。

ブレース構造では、ブレースが入る壁の位置が窓や間取りを制限する。ラーメン構造では大きな開口をつくりやすいが、柱梁の接合部と部材寸法が大きくなりやすい。

同じ鉄骨造でも、両者では間取り変更の条件が異なる。構造伏図や軸組図で、ブレース、柱、梁の位置を確認する。

梁の長さと床のつくりを見る

柱の少ないLDKやビルトインガレージでは、梁が長くなる。

梁が長くなるほど、強度だけでなく、たわみや振動への配慮が必要となる。2階の床が軽い場合は、歩行や子どもの飛び跳ねによる振動が下階へ伝わりやすい。

確認したいのは、梁の太さだけではない。梁の間隔、床版の構成、床の厚さ、振動への検討方法まで見る。

鉄骨を断熱層の内側へ納められるかを見る

鉄は熱を通しやすいため、柱や梁が断熱層を横切ると熱橋になる。

室内側だけに断熱材を入れても、鉄骨が屋外側まで連続していれば、その部分から熱が逃げやすい。冬には鉄骨付近の表面温度が下がり、条件によっては壁内結露の原因となる。

外張り断熱で鉄骨の外側を連続して覆う方法や、柱・梁まわりへ専用の断熱処理を行う方法がある。断熱材の厚さだけでなく、鉄骨部分で断熱層が途切れていないかを断面図で確認する。

選択肢になる住宅・注意したい条件

検討しやすい住宅
  • 大きな窓やビルトインガレージを構造計画と一体で考えたい住宅
  • 3階建てなど、柱と梁で空間を整理したい住宅
  • 工場加工された部材やユニットで施工精度をそろえたい住宅
注意したい条件
  • ブレース位置を確認せず、大幅な間取り変更を予定している住宅
  • 長い梁や軽い床を使うのに、床振動を確認していない計画
  • 鉄骨まわりの熱橋処理や耐火被覆が図面に示されていない住宅

購入前の確認と注意点

構造方式と部材寸法を図面に残す

「軽量鉄骨造」「重量鉄骨造」という名称だけでは、建物の構造は分からない。

構造図には、ブレース構造かラーメン構造か、柱と梁の位置・断面寸法・鋼材、ブレースの配置、柱梁接合部、柱脚の仕様を残しておきたい。

重量鉄骨であっても、細い柱を長く使えば変形しやすくなる。軽量鉄骨でも、ブレースと接合部を適切に配置すれば必要な性能を確保できる。軽量・重量は耐震性能の等級ではない。

溶接・ボルト・柱脚の検査方法を確認する

鉄骨造では、工場で行う溶接、現場で締めるボルト、基礎へ固定する柱脚が建物の強さを左右する。

契約前に、鉄骨を製作する工場、溶接部の検査方法、高力ボルトの締付け確認、アンカーボルトの位置確認をどのように記録するか聞いておく。

完成後は接合部が壁や天井に隠れる。鉄骨製作図、溶接検査記録、ボルトの施工記録、柱脚とアンカーボルトの写真を受け取れる条件を確認したい。

開口・設備配管・改修の変更条件を確認する

鉄骨の梁やブレースへ、設備配管のための穴を現場判断で開けることはできない。壁の中のブレースを移動したり、梁を切り欠いたりすれば、力の流れが変わる。

エアコン、換気設備、給排水管、大きな窓の位置は、鉄骨製作前に構造図と重ねて確認する。

引き渡し後の改修では、構造部材だけでなく、切断や穴開けによって失われる防錆処理・耐火被覆・断熱材の復旧方法まで決める必要がある。



ひつヤギ君

鉄骨造なら、壁を自由に動かせるの?

じギィ博士

ラーメン構造の非耐力壁なら変更しやすい場合もあるが、ブレースや柱、梁は動かせないぞ。鉄骨造という名称ではなく、どこで地震の力を受けているかを図面で確認することが大切じゃ。

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