構造・工法図鑑No.006
混構造
Mixed-Structure Construction
木造・鉄骨造・RC造など、異なる構造を一つの建物に組み合わせる工法。斜面側をRC造、上階を木造にするなど、それぞれの材料を適した場所へ使える一方、構造が切り替わる境界の設計が難しくなる。
選ぶポイントは、材料の組み合わせではなく、地震力の分担・境界部分の接合・重量差・基礎・防水や断熱の連続性にある。

| 間取り自由度 | 大空間 | 改修性 | 品質安定性 |
| ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ |
混構造とは?
混構造は、一つの建物の主要な構造部分に、異なる構造種別を組み合わせる工法。
住宅では、1階をRC造、2階以上を木造にする構成が代表的となる。ほかにも、ビルトインガレージを鉄骨造、その上や隣を木造にする方法、RC造のコアと木造部分を同じ階で組み合わせる方法がある。
単に木の内装をRC造へ取り入れたり、木造住宅へ鉄骨階段を設置したりするだけでは、通常は混構造とは呼ばない。建物を支える柱・梁・耐力壁・床などに、複数の構造が使われているかが違いとなる。
重要なのは、材料ごとの強さを足し合わせることではない。
上階の木造部分に加わった地震力を床へ集め、接合部を通して下階のRC造や鉄骨造へ渡し、最終的に基礎まで流す必要がある。境界部分で力が途切れれば、それぞれの構造が強くても一つの建物として働かない。
- 異なる構造を、階・平面・部材ごとに組み合わせる
- 材料そのものより、境界で力を渡す接合部が重要
- 木造部分とRC造部分を別々に安全確認するだけでは不十分

主な種類と違い
立面混構造|階によって構造を変える

立面混構造は、上下方向で構造を切り替える方法。
住宅では、1階をRC造または鉄骨造、上階を木造にする構成が多い。傾斜地に接する下階、地下車庫、ビルトインガレージ、浸水への備えが必要な低層部などへ非木造を使い、上部を軽い木造にできる。
構造が切り替わる床では、上階の耐力壁や柱から伝わる力を、下階の壁・柱・梁へ渡す必要がある。上階の壁と下階の構造がずれている場合は、境界部分の床や梁へ力が集中する。
「1階が強いRC造だから上階を自由にできる」という意味ではない。木造部分の耐力壁配置と、下階へ力を渡す位置をそろえて考える。
平面混構造|同じ階の中で構造を分ける

平面混構造は、同じ階の中に木造部分とRC造・鉄骨造部分を並べる方法。
たとえば、階段やエレベーターを囲む中央部分をRC造のコアとし、その周囲を木造にする構成がある。木造部分が鉛直荷重を支え、RC造部分が地震や風による水平力を多く負担する計画も可能となる。
ただし、硬いRC造部分を建物の片側へ寄せると、地震時に建物がねじれやすくなる。木造部分の床には、地震力をRC造部分まで運べる水平剛性が必要となり、大きな吹き抜けや床開口が影響する。
平面図では、木造とRC造の境界だけでなく、床がどの方向へ力を伝え、どこで水平力を負担するのかまで確認したい。
部分混構造|必要な架構だけ材料を変える

木造住宅の一部へ鉄骨梁を使って長い距離を飛ばす方法や、RC造のコアへ木造架構を接続する方法など、特定の架構だけ異なる材料へ置き換える構成もある。
柱の少ないLDK、吹き抜け、大きな窓、ガレージなどをつくりやすい一方、異種材料の接合部には力が集中しやすい。
木材は含水率によって寸法が変わり、鉄骨は温度変化の影響を受け、コンクリートには乾燥収縮がある。構造上安全でも、変形差によって内装のひび割れ、建具のずれ、防水層の損傷が生じることがある。
部分的に鉄骨梁を使うだけでも、梁端の接合方法、耐火被覆、結露対策、木材への力の渡し方まで設計する必要がある。
メリット・デメリット
- 斜面や地下車庫など、土地条件へ構造を合わせやすい
- RC造や鉄骨造で大空間をつくり、木造で上部を軽くできる
- 構造ごとの特性を、必要な場所へ限定して使える
- 異なる構造の境界に設計と施工の難しさが集中する
- 構造計算、確認申請、施工管理の範囲が複雑になりやすい
- 将来の開口変更や増改築で、複数の構造を再検討する必要がある
混構造は境界部分で決まる
混構造の弱点になりやすいのは、木造部分やRC造部分そのものではなく、両者をつなぐ境界部分。
立面混構造では、上階の木造耐力壁から伝わる引抜力やせん断力を、アンカーボルト、接合金物、RC梁や床へ渡す。金物の本数だけでなく、RC部分への埋込み位置、鉄筋との干渉、コンクリート端部までの距離が重要となる。
平面混構造では、木造床から硬いRCコアへ水平力を集めるため、床面のつながりが欠かせない。階段や吹き抜けで床が大きく途切れると、想定した経路で力を渡せないことがある。
さらに境界部分には、構造だけでなく、防水、断熱、気密、耐火、設備配管も集まる。構造図で成立していても、断面詳細図がなければ現場で正しく納まるとは限らない。
選ぶときに役立つ三つの視点
地震力をどの構造が負担するかを見る

最初に確認したいのは、どの材料を使うかではなく、地震や風の力をどの部分が負担するのか。
上階の木造部分から下階のRC造へ力を渡すのか、RCコアへ水平力を集めるのか、木造と鉄骨造がそれぞれ分担するのかによって、必要な床と接合部が変わる。
構造図では、耐力壁、柱、梁だけでなく、床面を通る力の経路と、基礎までのつながりを見る。
境界の接合詳細を見る

異なる構造の境界には、アンカーボルト、ベースプレート、接合金物、埋込み金物などが使われる。
確認したいのは金物の商品名より、どの力を、どの部材からどの部材へ渡す接合なのか。
木造の土台や柱をRC床へ固定する場合は、アンカーと鉄筋の干渉、木材とコンクリートの間の防水、基礎パッキンや気密層の納まりも必要となる。
外壁の構造が途中で変わる場所では、仕上げをそろえるだけでは足りない。構造間の変形差を吸収できる目地と、防水層の連続性まで断面図で確認したい。
重量差と基礎を見る

RC造部分は木造部分より重くなりやすい。同じ建物の中で重量が大きく変わると、地盤へ伝わる力にも偏りが生じる。
平面混構造では、重いRC造部分だけ沈下量が異ならないか、立面混構造では、下階と基礎が上部構造の重量を受けられるかを確認する。
国土交通省の資料でも、RC造と木造の平面混構造では、RC部分の重量と不同沈下への配慮が課題として挙げられている。
基礎形式だけでなく、地盤調査結果、基礎の厚さ、配筋、杭や地盤改良の配置まで、建物全体の重量分布と合わせて見る必要がある。
選択肢になる住宅・注意したい条件
- 傾斜地や地下車庫があり、下部をRC造にしたい住宅
- ガレージや大空間だけ鉄骨造とし、居住部分を木造にしたい住宅
- 木造の軽さと、RC造・鉄骨造の架構を目的別に使い分けたい計画
- 構造の境界が多いのに、接合部の詳細図がない計画
- RC造部分が片側へ偏り、地震時のねじれを確認していない平面
- 将来、境界付近へ窓・吹き抜け・設備開口を追加したい住宅
購入前の確認と注意点
正式な構造構成と計算方法を確認する

「木造+RC造」「一部鉄骨」といった説明だけでは、建物がどのように支えられているか分からない。
契約前に、どの階・どの範囲・どの部材が木造、鉄骨造、RC造なのかを図面へ明記する。あわせて、立面混構造か平面混構造か、地震力を負担する構造、採用する構造計算方法を確認したい。
木造部分だけを住宅会社、RC部分だけを別の設計者が確認するのではなく、建物全体と境界部分を誰が構造設計するのかを明確にする。
境界部分の図面と検査記録を残す

混構造では、完成後に見えなくなる接合部が建物全体の性能を左右する。
木造とRC造の境界なら、アンカーボルト、接合金物、土台、RC梁や床の配筋を一枚の詳細図で確認する。木造と鉄骨造の境界なら、ボルト、溶接、木部への接合、防錆、耐火被覆を分けずに記録する。
施工時は、コンクリートを打設する前のアンカー位置、配筋との干渉、金物の取付け、境界部分の防水と断熱が分かる写真を残しておきたい。
変更時に確認し直す範囲を決めておく

混構造では、一方の構造だけを変更したつもりでも、境界を通じて別の構造へ影響することがある。
上階の窓を大きくすれば耐力壁から境界床へ伝わる力が変わり、1階ガレージの開口を広げれば、その上の木造部分を受ける梁や柱も変わる。
契約後に間取りや開口を変更する場合は、意匠図だけで終わらせず、木造・鉄骨造・RC造を含む構造図と接合詳細を更新する条件を確認しておく。
ひつヤギ君材料を組み合わせれば、それぞれの長所だけを使えるの?
じギィ博士そう単純ではないぞ。異なる構造をつなぐと、力の流れや変形の違いまで考える必要がある。混構造は材料の種類より、境界部分を誰がどう設計したかを見ることが大切じゃ。
暮らしをつくる12の図鑑
HOUSE BUILDING ENCYCLOPEDIA
家づくりの知識を、ひとつずつ。
じギィ博士の研究ノート


