外構図鑑No.002
イロハモミジ
Japanese Maple
手のひら状に裂けた繊細な葉と、秋の紅葉を楽しめる落葉樹。夏は柔らかな木陰をつくり、落葉後は日差しを通す。一方、強い西日と乾燥で葉焼けしやすく、狭い場所で切り詰めると樹形を崩しやすい。
選ぶポイントは紅葉の色だけでなく、夏の日当たり・成長後の枝幅・苗木の骨格・剪定時期にある。

| 成長の穏やかさ | 管理のしやすさ | 目隠し効果 | 狭い庭との相性 |
| ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ |
イロハモミジとは?
イロハモミジは、ムクロジ科カエデ属の落葉樹。
葉は手のひらのように5~7裂し、春は明るい新緑、夏は緑葉、秋は赤や橙色の紅葉を見せる。落葉後は幹と細い枝が現れ、季節ごとに庭の景色を変える。
自然状態では10mを超えることがある。庭では剪定によって高さを抑えられるが、低木のように小さな植栽枡へ納め続ける木ではない。高さだけでなく、横へ広がる枝のための空間も必要となる。
「モミジ」は、イロハモミジだけを指す名称として使われるとは限らない。園芸店ではヤマモミジ、オオモミジ、枝垂れモミジ、赤葉品種なども「モミジ」と表示されることがある。樹形や成長後の大きさを知るには、樹種名と品種名の確認が必要となる。
- 春の芽吹き、夏の緑、秋の紅葉、冬の枝姿を楽しめる
- 自然樹形は横へ広がるため、枝幅を確保する
- 「モミジ」という販売名だけで樹形を判断しない


育ち方と管理
夏の西日と乾燥を避ける

イロハモミジは日当たりのある場所でも育つが、夏の強い西日、乾いた風、根元の乾燥が重なると、葉先や葉の縁が茶色く傷みやすい。
特に注意したいのが、建物の南西側、駐車場の脇、コンクリートや外壁から照り返しを受ける場所。夏に葉焼けすると、秋まで葉が残らず、十分に紅葉を楽しめないことがある。
暗い日陰へ植えればよいわけでもない。光が不足すると枝が明るい方向へ偏り、樹形が片寄りやすい。午前中は日が当たり、夏の午後は直射日光が弱まる場所が検討しやすい。
根元へ水が入る土の範囲を残す

玄関前やアプローチ脇では、根元の近くまでコンクリートやタイルで囲まないようにする。植栽部分が小さいと雨水が入りにくく、夏には土の温度も上がりやすい。
幹の周囲には土が見える範囲を残し、水が染み込めるようにする。幹が太くなったときに縁石へ接触しない距離も必要となる。
砂利、排水溝、室外機の裏側は、細かな落ち葉が入り込むと掃除しにくい。紅葉を眺める場所だけでなく、落ち葉を集めやすい場所かどうかも考えて植えたい。
樹形を小さくするより、混み合う枝を抜く

イロハモミジの枝先を毎年同じ位置で切ると、切った部分から細い枝が増え、樹冠の外側が密集しやすい。高さや幅を抑えたい場合も、外側を丸く刈り込むのではなく、枝同士が交差する部分や内側へ伸びる枝を付け根から間引く。
上へ強く伸びた枝は途中でぶつ切りにせず、横枝との分岐部分まで戻して整理する。大枝になってから切るより、若いうちに不要な枝を選ぶほうが切り口を小さくできる。
モミジ類は春先に切ると樹液が流れやすい。大きな剪定は、落葉後から厳寒期に入る前を目安とし、植えた地域や木の状態に合わせて判断する。
メリット・デメリット
- 季節の変化が分かりやすい
- 枝葉の間から光が抜け、柔らかな木陰をつくる
- 和風・洋風のどちらの外構にも合わせやすい
- 強い西日と乾燥で葉焼けしやすい
- 秋にまとまった量の落ち葉が出る
- 切り詰めを繰り返すと細い枝が増えやすい
選ぶときに役立つ三つの視点
秋の色より、夏の日当たりを見る

植える場所は、紅葉を見る秋ではなく、7~8月の午後に確認したい。
強い西日が長時間当たる場所や、舗装と外壁に囲まれた場所では、葉と根元の両方が乾きやすい。軒、塀、建物、周囲の樹木によって、夏の午後に適度な影ができるかを見る。
日照が少なすぎても枝が片寄るため、明るさを確保しながら、西日を弱められる場所を選ぶ。
樹高だけでなく、枝幅を見る

イロハモミジは、横へ重なる細い枝に魅力がある。狭い場所へ植え、毎年両側を切り詰めると、本来の樹形を生かしにくい。
外壁や窓の近くでは、枝先が接触しない距離を確保する。道路や隣地へ枝が出そうな場合も、剪定だけで抑え続ける前提にしない。
苗木の大きさではなく、成長後に枝をどこまで広げられるかで植える位置を決めたい。
葉色より、幹と枝の骨格を見る

苗木を選ぶときは、紅葉の鮮やかさより、落葉後にも残る幹と枝を見る。
同じ位置から太い枝が集中している株、枝同士が強く交差している株、幹の途中に大きな傷がある株は、成長後に手直しが必要になりやすい。
株立ちでは、幹の本数だけでなく、幹同士の間に適度な空間があるかを確認する。今の葉の多さより、将来の樹形をつくる骨格を優先する。
選択肢になる住宅・注意したい条件
- 室内や玄関から季節の変化を眺めたい庭
- 夏の西日を避けながら、明るさを確保できる庭
- 枝を横へ広げる空間がある庭
- 南西向きで照り返しの強い小さな植栽枡
- 一年中、葉による目隠しが必要な場所
- 毎年同じ高さと幅へ刈りそろえたい庭
購入前の確認と注意点
樹種名と品種名を確認する

一般的なイロハモミジは、春から夏に緑葉となり、秋に赤や橙色へ色づく。購入時に赤く紅葉していても、翌年の春から赤い葉が出るわけではない。
夏も赤い葉を楽しみたい場合は、イロハモミジという樹種名だけでなく、赤葉系の園芸品種を選ぶ必要がある。反対に、春の芽吹きや秋の紅葉を自然に楽しみたい場合は、一般的な緑葉のイロハモミジが候補となる。
紅葉の色は、気温、日照、乾燥、個体差によっても変わる。購入時の葉色ではなく、春から夏の葉色と品種名を確認する。
接ぎ木苗は、接ぎ口と台木から伸びる枝を見る

葉色や葉形に特徴がある園芸品種では、接ぎ木苗が使われることがある。根元付近に接ぎ口があり、その下側が別の台木となっている苗木もある。
接ぎ口の下から枝が伸びると、選んだ品種とは異なる葉が出る場合がある。赤葉品種の根元から緑色の葉を付けた枝が伸びている場合は、台木から出た枝の可能性を確認したい。
購入時は、接ぎ口に大きな割れや傷がないか、台木側から太い枝が伸びていないかを見る。植え付け後も、接ぎ口より下から出た枝を、品種本来の枝と混同しないことが重要となる。
葉の多さより、切り戻された幹と枝先を見る

葉が密に茂った苗木は立派に見えるが、枝先を何度も切り戻してつくられた樹形では、同じ場所から細い枝が集中していることがある。
イロハモミジは細い枝の重なりに魅力があるため、枝先だけが団子状に密集した苗木は、植え付け後に整理が必要となる。幹の途中に太い切断跡がある苗木も、その周囲から不自然に枝が増えていないか確認したい。
可能なら落葉期の枝姿を見る。葉がある時期は、内向きの枝、交差枝、太い切り戻し跡が隠れやすい。葉の量ではなく、幹から枝先まで自然につながっている苗木を選ぶ。
ひつヤギ君秋に一番赤い苗木を選べば、家でもきれいに紅葉するの?
じギィ博士その年の葉色だけでは決められないぞ。夏に葉を傷めない場所と、落葉後にもきれいに見える幹や枝を選ぶことが大切じゃ。
暮らしをつくる12の図鑑
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家づくりの知識を、ひとつずつ。
じギィ博士の研究ノート


