土地図鑑No.006
市街化区域・市街化調整区域
Urbanization Promotion Area / Urbanization Control Area
街を広げる区域と、無秩序な開発を抑える区域を分ける都市計画の仕組み。
土地選びで重要なのは、区域名だけではなく、希望する家を建てられる根拠があるか。

| 建てやすさ | インフラ | 将来の自由度 | 確認の難しさ |
| 市街化区域:高め | 市街化区域:整いやすい | 調整区域:低くなりやすい | 調整区域:高い |
市街化区域・市街化調整区域とは?
都市計画区域の一部では、土地を次の二つに分けている。この区分を区域区分、一般には「線引き」と呼ぶ。
市街化区域
すでに市街地を形成している区域と、おおむね10年以内に優先的・計画的に市街化を進める区域。
住宅や店舗を建てる前提で、道路・公園・下水道などの整備が進められやすい。
市街化調整区域
市街化を抑制する区域。
農地や自然環境を守り、街が無秩序に広がることを防ぐ役割がある。住宅の新築、建て替え、用途変更などには、都市計画法の許可や許可不要となる根拠が必要になる。区域区分のない都市計画区域もある
- 市街化区域は、市街化を優先して進める区域
- 市街化調整区域は、市街化を抑える区域
- 調整区域でも、条件を満たせば建築できる場合がある

二つの区域で変わること
| 確認項目 | 市街化区域 | 市街化調整区域 |
|---|---|---|
| 住宅の新築 | 用途地域などに適合すれば進めやすい | 許可または許可不要の根拠が必要 |
| 用途地域 | 原則として定められる | 原則として定めない |
| 開発許可 | 一定規模以上などで必要 | 規模が小さくても立地基準の確認が重要 |
| インフラ | 整備されやすい | 未整備や自己負担が残る場合がある |
| 建て替え・用途変更 | 一般的な建築規制を確認 | 既存建物の経緯と許可条件まで確認 |
| 売却・融資 | 比較しやすい | 買主・金融機関が限定される場合がある |
市街化区域では、どのような建物を、どの大きさで建てられるかが中心になる。
市街化調整区域では、その前にその場所で、その計画を実行できるかを確認する必要がある。
市街化調整区域でも建てられる場合
市街化調整区域では、開発行為や建築行為が原則として抑制される。ただし、都市計画法や自治体の基準に適合すれば建築できる場合がある。
代表例は次のとおり。
- 農林漁業を営む人の住宅や、その事業に必要な建築物
- 周辺住民の日常生活に必要な小規模店舗や公益施設
- 地区計画に適合する建築物
- 自治体が条例で指定した区域・用途に適合する建築物
- 既存建築物の適法な建て替えや用途変更
- 開発審査会の基準に適合する自己用住宅など
ただし、認められる条件は全国一律ではない。都市計画法の枠内でも、条例、審査基準、区域指定、運用が自治体によって異なる。「誰が建てるか」まで条件になる。
既存住宅があっても、建て替え可能とは限らない
調整区域に住宅が建っている理由は一つではない。
- 区域区分が定められる前から存在していた
- 過去に開発許可や建築許可を受けた
- 農家住宅など、特定の資格で建てられた
- 許可不要となる建築物だった
- 現在とは異なる基準で認められた
この経緯によって、建て替えられる人、用途、規模、敷地範囲が変わる。
中古住宅の広告に「再建築可」と書かれていても、それだけでは不十分となる。許可年月日、許可番号、許可を受けた用途、申請者の資格、敷地の範囲を確認する必要がある。
増築・離れ・用途変更にも注意
建て替えが認められても、計画を自由に変更できるとは限らない。
床面積を大きく増やす、敷地を広げる、二世帯住宅へ変える、離れを建てる、住宅を店舗や事務所として使うといった変更が、新たな許可の対象になる場合がある。
「今住める」と「将来も希望どおりに使える」は別に確認する。
市街化区域のメリット・注意点
- 住宅建築の手続きと判断基準が比較的分かりやすい
- 道路、上下水道、公共交通、生活施設が整いやすい
- 建て替えや売却で購入候補者を確保しやすい
- 土地価格が高くなりやすい
- 建物や交通量が増え、周辺環境が変化する可能性がある
- 用途地域や地区計画によって、希望する家を建てられない場合がある
市街化調整区域のメリット・注意点
- 土地価格を抑えられる場合がある
- 低密度な環境や広い敷地を選びやすい
- 周囲の市街化が急速に進みにくい
- 新築・建て替え・用途変更に制限がある
- 上下水道の引込み、浄化槽、道路整備などの費用が増える場合がある
- 売却先や住宅ローンを扱う金融機関が限られる場合がある
選ぶときに役立つ三つの視点
「建てられるか」ではなく「希望する計画が通るか」

不動産会社の「家は建てられる」という説明だけでは判断できない。
確認する内容は、建築できる人、用途、延べ面積、階数、敷地範囲、分家・自己用などの条件となる。購入予定者の名義と具体的な建築計画を示し、許可権者へ確認する。
建築会社の標準プランが、許可条件や敷地条件に収まるかも重要となる。
土地価格ではなく、住み始めるまでの総額で比べる

調整区域では、次の費用が土地代の外に出やすい。
- 開発許可・建築許可の申請、測量、設計
- 道路後退や道路整備
- 水道管の延長、加入金、井戸
- 下水道がない場合の浄化槽
- 農地転用、造成、擁壁、排水設備
- 電気・通信設備の引込み
市街化区域の土地と比べるときは、同じ大きさの家を完成させ、生活を始めるまでの総額で比べる。
将来の出口まで確認する

住宅は、建てた後に相続、増改築、建て替え、売却が起こる。
現在の所有者に認められた条件が次の所有者へ引き継がれるか、住宅ローンを利用できるか、同じ用途で再建築できるかを確認する。
調整区域では、建物の価値だけでなく、次の所有者も使える許可の根拠があるかが売りやすさに影響する。
選択肢になる土地・注意したい条件
- 許可の根拠と建築条件を書面で確認できる土地
- インフラと接道が整い、追加工事費を把握できる土地
- 長く住む予定があり、周辺の低密度な環境を重視する土地
- 「昔から家があるから建て替えられる」とだけ説明される土地
- 売主と買主で許可条件が変わる可能性がある土地
- 許可番号や適法性を示す資料が残っていない土地
購入前の確認と注意点
区域図は住所ではなく敷地へ重ねる

区域の境界は、道路、河川、地番界などに沿って定められる。住所検索の結果だけでは、敷地全体の区域を判断できない場合がある。
都市計画図と公図・測量図を重ね、敷地のどこを境界が通るか確認する。境界付近では、自治体の都市計画担当窓口で確認する。
許可の見込みは契約前に確認する

調整区域の土地は、購入後に相談する順番では遅い。
購入者、建物用途、規模、配置、敷地範囲を示したうえで、開発許可・建築許可の担当部署へ事前相談する。回答の根拠となる条文、条例、審査基準、必要手続きも記録する。
売買契約には、必要な許可が得られない場合を想定した停止条件や解除条件を設ける方法がある。契約内容は宅地建物取引士や法律の専門家と確認する。
都市計画法以外の条件も重ねて確認

調整区域で建築できる見込みがあっても、次の問題が残る場合がある。
- 建築基準法上の道路へ接しているか
- 農地転用が必要か
- 盛土規制法、土砂災害、浸水などの規制・リスク
- 上下水道、浄化槽、雨水排水の整備条件
- 地区計画、景観条例、自治体独自の土地利用規制
一つの許可だけで、土地全体の問題が解決するわけではない。
ひつヤギ君調整区域でも家が建っていれば、同じ場所に建て替えられるんだよね?
じギィ博士そうとは限らん。誰が、何の目的で、どの許可を受けて建てたかによって条件が変わる。まず許可の記録を確認することじゃ。
暮らしをつくる12の図鑑
HOUSE BUILDING ENCYCLOPEDIA
家づくりの知識を、ひとつずつ。
じギィ博士の研究ノート


