内装図鑑No.005
フロアタイル
Vinyl Floor Tile
塩化ビニル樹脂を主原料とし、木目や石目、モルタルなどを再現したタイル状の床材。薄く硬いため意匠を再現しやすい一方、下地の平滑さ・接着剤・目地・温度による寸法変化が仕上がりを左右する。
選ぶポイントは、柄の好みだけでなく、表面層の仕様・タイル寸法・施工方法・使用場所への適合にある。

| 木質感 | 傷への強さ | 寸法安定性 | 補修性 |
| ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
フロアタイルとは?
この図鑑で扱うフロアタイルは、陶磁器製のタイルではなく、塩化ビニル樹脂を主原料とするビニル床タイルである。
木目や石目を印刷した柄層の上へ透明な層や表面コーティングを重ね、凹凸加工によって木肌や石の質感を再現する。クッションフロアと同じビニル系床材だが、発泡層を持つシート状のクッションフロアより硬く、一枚ずつ張る点が異なる。
一般的な住宅用製品は厚さ2〜3mm程度と薄く、モルタルや合板、既存床などの上へ接着して施工する。床そのものを支える構造材ではなく、下地の上へ張る仕上げ材となる。
無垢・挽板・突板フローリングのように天然木を表面へ使わないため、木目の節や色幅は印刷でつくられる。その一方、天然木にはない石目やモルタル柄を選べ、同じ柄を複数の部屋へそろえやすい。
- 塩化ビニル樹脂を使った、薄く硬いタイル状の床材
- 木目や石目は、印刷と表面の凹凸で再現する
- クッションフロアより硬いが、陶磁器タイルとは別の床材

主な種類と違い
複層ビニル床タイル|住宅で多く使われるタイプ

複層ビニル床タイルは、基材・印刷された柄層・透明層・表面コーティングなど、役割の異なる層を重ねた床材。
木目や石目を細かく印刷できるため、住宅で「フロアタイル」として目にする製品の多くがこのタイプとなる。表面の凹凸を印刷柄へ合わせた製品では、木の導管や石の割れ模様まで立体的に表現できる。
同じ複層タイプでも、表面透明層の厚さ、コーティング、面取りの形によって、傷の付き方や目地の見え方が異なる。製品全体の厚さだけでは、表面の耐久性は判断できない。
単層・コンポジションタイル|表面だけに柄を印刷しない

単層ビニル床タイルは、表面から裏面までをほぼ同質の材料でつくるタイプ。コンポジションビニル床タイルは、樹脂に充填材などを加えて成形する。
印刷された木目を楽しむ住宅用製品より、店舗、学校、施設などで使われることが多い。摩耗しても印刷層だけが消える構造ではないが、製品によってはワックスを使った維持管理が前提となる。
置敷きビニル床タイル|厚さと接着方法が異なる

置敷きビニル床タイルは、一般的な接着施工タイプより厚く重くつくられ、改修しやすいようにした床材。4〜5mm程度の製品があり、オフィスのOAフロアや既存床への重ね張りで使われる。
「置敷き」という名前でも、完全に置くだけとは限らない。多くは、タイルがずれるのを防ぎながら後で剥がせるピールアップ形接着剤を下地へ塗って施工する。
厚くなる分、既存床との段差、ドア下の隙間、見切り材の納まりが変わる。住宅で採用する場合は、一般的な薄型フロアタイルと同じ施工だと思い込まないことが重要となる。
メリット・デメリット
- 木、石、モルタルなど幅広い素材を再現できる
- 薄いため、既存床への重ね張りを検討しやすい
- 傷んだ部分だけを一枚単位で交換できる場合がある
- 薄く硬いため、床の冷たさや硬さを感じやすい
- 下地の凹凸や接着剤の塗りむらが表面へ現れることがある
- 一枚ずつ張るため、床面に多くの目地ができる
フロアタイルは水に強くても、防水床にはならない
塩化ビニル製のフロアタイルは、材料自体へ水が染み込みにくい。水をこぼしても表面からすぐ内部へ吸収される木質床材とは異なる。
ただし、完成した床にはタイル同士の目地がある。水を長時間放置すれば、目地から下地や接着層へ入り、接着剤の劣化、浮き、剥がれ、下地の膨れにつながる可能性がある。
そのため、フロアタイルを使った床は「水を拭き取りやすい床」ではあるが、目地まで一体化した防水床ではない。洗面所やトイレへ使う場合は、床材の耐水性だけでなく、目地へ入った水を想定した下地と接着剤が必要となる。
選ぶときに役立つ三つの視点
全厚ではなく、表面層と加工を見る

フロアタイルの全厚には、柄を守る透明層だけでなく、裏側の基材も含まれる。全厚が大きい製品でも、必ず表面傷に強いとは限らない。
表面透明層の厚さ、表面コーティング、エンボスの深さ、面取りの有無を分けて確認する。土足対応やキャスター対応などの表示も、住宅で使う条件と照らし合わせたい。
深い凹凸は素材感を出しやすいが、溝へ汚れが残る場合がある。光沢の強い表面では擦り傷が目立ちやすく、マットな表面では油分による艶むらが見えることもある。カットサンプルだけでなく、光を斜めから当てて表面を見ることが重要となる。
タイル寸法と柄の繰り返しを見る

木目調は細長い板形状、石目調は正方形や大判形状が多い。タイルの寸法によって、同じ柄でも部屋の広さや目地の本数が変わる。
印刷床材では、複数の柄を組み合わせて自然なばらつきをつくる。施工面積が広いと、同じ節や濃淡が近くに並び、柄の繰り返しが目立つことがある。
確認したいのは一枚のサンプルではなく、一箱に何種類の柄が含まれるか、施工時に向きを変えられるか、同じ柄を離して配置できるかである。窓際や部屋の中央に特徴の強い柄が集中しないよう、仮並べしてから張ると仕上がりを整えやすい。
硬さと歩行音を部屋の用途に合わせる

一般的なフロアタイルには、クッションフロアのような厚い発泡層がない。下地へ密着させるため、足触りは硬く、冬は下地の冷たさを感じやすい。
椅子を引く音や物を落とした音も、床材だけで大きく吸収することは難しい。マンションでは、既存の防音フローリングの上へ張れる製品であっても、完成後の床全体が管理規約の遮音条件を満たすかは別に確認が必要となる。
リビング、キッチン、寝室では求める硬さが異なる。柄だけで選ばず、スリッパを使わない状態での足触りと、椅子を動かしたときの音までサンプルで確かめたい。
選択肢になる住宅・注意したい条件
- 木目以外に、石やモルタルの質感を床へ取り入れたい住宅
- 床を大きく解体せず、薄い材料で改修したい住宅
- 汚れた部分を一枚単位で交換できる計画にしたい住宅
- 床の柔らかさや足元の暖かさを重視する住宅
- 下地に段差、たわみ、古い接着剤の凹凸が残っている床
- 大量の水を使う場所へ、目地処理を考えず採用する計画
購入前の確認と注意点
下地と接着剤を一組で指定する

フロアタイルは薄いため、下地の段差、ビス頭、合板の継ぎ目、古い床の凹凸を隠せない。施工後に柄だけを見ても、下地の状態までは判断できない。
見積書には、床材の商品名だけでなく、既存床を剥がすのか重ね張りするのか、下地を何で平滑にするのか、どの接着剤を使うのかを記載する。
直射日光と床暖房への対応を確認する

ビニル床タイルは、温度によって伸び縮みする。日差しで床面が高温になる掃き出し窓の近くでは、突き上げ、隙間、反りが生じることがある。
床暖房へ使う場合は、「ビニルだから使える」と判断せず、床暖房対応品か確認する。対応品でも、指定接着剤、施工前後の運転停止、下地の乾燥、温度の上げ方が決められている場合がある。
ゴム製品と使用できる洗剤を確認する

ビニル床材は、ゴム製のキャスター、家具の脚ゴム、滑り止めマットなどと長時間接触すると、黄色や茶色に変色することがある。
これは表面の汚れではなく、ゴムに含まれる成分とビニル床材の可塑剤などが関係するゴム汚染で、内部まで変色すると洗剤で落とせない。
家具やワゴンを置く前に、脚やキャスターの材質を確認する。保護材を使う場合も、裏面がゴム製のものは避ける。あわせて、使用できる洗剤、ワックスの必要性、アルコールや漂白剤への対応を品番ごとに確認したい。
ひつヤギ君フロアタイルなら、水をこぼしても放っておいて大丈夫なの?
じギィ博士床材そのものは水を吸いにくいが、タイルの目地はなくならないぞ。水は早めに拭き、洗面所やトイレでは下地と接着剤まで水に備えることが大切じゃ。
暮らしをつくる12の図鑑
HOUSE BUILDING ENCYCLOPEDIA
家づくりの知識を、ひとつずつ。
じギィ博士の研究ノート


