ひつヤギ君じギィ博士、
遮熱と断熱ってよく聞く言葉だけど...
何か違うの?言い方が違うだけで同じじゃないの?



ほほぅ、確かによく似たようなものと思われがちじゃな。
だがしかし!
遮熱と断熱は全然ちがうものなのじゃよ!
住宅の性能について調べていると、「断熱」と「遮熱」という言葉をよく目にします。どちらも熱を防ぐためのものなので、同じような意味に思えるかもしれません。しかし、実際には熱を防ぐ仕組みが異なり、特に夏と冬の住宅を考えるうえでは、この違いを理解しておくことが重要です。
熱の伝わり方は3種類
熱は必ず高温側から低温側へ移動します。
熱が移動する方法は大きく3種類です
①熱伝導:物質の中を熱が伝わっていく現象。例)熱したフライパンの取っ手が熱くなる。
②熱対流:空気や液体などの移動によって熱が運ばれる 。例)暖房器具で暖められた空気が上昇し部屋全体に熱が運ばれる。
③輻射熱(放射熱):物質を介さずに電磁波によって熱が伝わる。例)太陽の熱が真空の宇宙空間を超えて地球に届く。


断熱材とは
断熱材はその『断熱』という言葉から、熱の浸入を断つイメージが強いかと思います。しかし、その本質は熱の侵入を断つのではなく、時間的に遅らせることです。つまり断熱材は「熱を断つ」のではなく、「熱の移動を小さくする」と考えるのが正しいです。
つまり、屋根や外壁から吸収された熱は断熱材を通過してゆっくりと最終的には室内へと伝わるということです。



高温から低温へ移動する熱の自然原則を断つことはできないというだね
・断熱≠熱を断つ
・断熱=熱の移動を
「室温が同じなのに寒い」のはなぜ?
例えば、冬の室温が20℃だったとします。
数字だけを見ると、それほど寒い温度には感じないかもしれません。しかし、同じ20℃の室内でも、壁や窓の表面が冷たければ、寒く感じることがあります。
これは、人間が単純に「空気の温度」だけで暑さや寒さを感じているわけではないからです。
私たちの身体は常に周囲の物体と熱をやり取りしています。床や壁、天井、窓なども、それぞれの温度に応じて熱を放射しており、人間の身体も同じように熱を放射しています。
室温が20℃でも、目の前の壁が15℃まで冷えていたとしましょう。身体からは、その冷たい壁に向かって熱が放射されます。そのため、空気は20℃あるのに、身体から熱が奪われて寒く感じることがあります。
逆に、夏に壁や窓の表面温度が高くなれば、今度はその表面から身体へ熱が放射されます。空気の温度だけを見れば同じでも、周囲の表面温度が高ければ、より暑く感じることがあります。
このような熱のやり取りを理解するうえで重要になるのが、「放射」または「輻射」です。





ということは、空気の温度だけではなく、床や壁からの放射熱も重要なの?



例えば焼肉で想像してごらん。炎とは対流、高温の空気が肉を包むと表面から熱せられていく。一方で、炭火焼きは炭からの放射熱によって肉の表面を直接温め、そこから熱が内部へ伝わっていく。これが放射による加熱じゃな。


つまり、住宅の快適性を考えるときには、室内の空気が何℃なのかだけではなく、床・壁・天井・窓などの表面温度がどの程度なのかを見る必要があります。
断熱材は「表面温度」を安定させる
では、断熱性能を高めると、なぜ快適になりやすいのでしょうか。
断熱材には、住宅の内外を移動する熱の量を小さくする役割があります。冬であれば、室内で暖めた熱が外へ逃げるのを抑え、夏であれば、外の熱が室内へ伝わるのを抑えます。
その結果、外気温の影響を受けにくくなり、室内側の床や壁、天井などの表面温度も安定しやすくなります。
ここで重要なのは、断熱材そのものが部屋を暖めたり、冷やしたりするわけではないということです。
暖房や冷房によってつくった温熱環境を、外へ逃がしにくくするのが断熱の基本的な役割です。
そのため、「断熱性能が高い家=暖房や冷房が必要ない家」という意味ではありません。断熱性能が高い住宅でも、夏には冷房、冬には暖房などによって必要な温度環境をつくる必要があります。



断熱は室内環境をできるだけ外気の影響から守るためのもの、と考えると分かりやすいぞ。
では「遮熱」は何を防ぐのか?



断熱が「熱の移動を小さくする」ことを目的にしているのはわかったけど、じゃあ遮熱は何なの?



うむ。遮熱は主に夏に太陽からの日射を反射させることによって、室内に熱が入ってくることを抑えることを目的としているんじゃ。
夏の住宅を考えると、太陽から大量の日射が降り注いでいます。
その日射が屋根や外壁、窓などに当たると、材料に吸収されて表面温度が上昇します。温度が高くなった表面からは熱が放射され、その熱が室内へ伝わることで、室温の上昇や暑さにつながります。
つまり、夏の暑さを考えるときには、単純に「外から伝わってくる熱を断熱材で止める」だけでなく、そもそも太陽のエネルギーを住宅に入れないことが重要になります。
これが遮熱という考え方です。
夏の窓から流入する熱は68%
高断熱住宅だからといって、それだけで夏に涼しくなるわけではありません。
断熱性能が高ければ、外から室内へ伝わってくる熱を抑えることはできます。しかし、窓から強い日射が入り、その日射が床や家具などに吸収されてしまえば、室内には新たな熱が加わることになります。
そのため、夏は「熱を伝えにくくする断熱」と同時に、「日射を室内に入れない遮熱」を考える必要があります。
特に重要なのが窓です。下図より、夏の熱の侵入源の約70%が窓からです。



70%も!?
そのため庇や外付けブラインド、アウターシェードなどを利用し、日射をできるだけ窓の外側で遮る(遮熱)ことが重要になります。





なぜ外側なの?
太陽の光が窓を通って室内に入ると、床や家具、カーテンなどに当たり、それらの物体が日射のエネルギーを吸収して温度が上がります。そして温度が上がった物体から、熱が室内へ放射されたり、周囲の空気を暖める原因となります。



つまり、太陽のエネルギーそのものが室内に入ってから遮っても効果が小さいんじゃな。窓を遮熱窓にするのも有効じゃぞ。
断熱と遮熱どちらがいいのか



断熱と遮熱の違いは分かったけど、結局どっちがいいの?



互いに役割が違うからどちらがいいというものでもないが、優先すべきは断熱じゃな
断熱と遮熱は、どちらか一方を選ぶものではありません。
それを理解したうえで、住宅の基本性能としてまず優先したいのは断熱です。


なぜなら、断熱は夏・冬を問わず、住宅の温熱環境の土台になるからです。断熱性能が低ければ、冬は暖房で暖めた熱が外へ逃げやすくなり、夏は外の熱が室内へ伝わりやすくなります。せっかく冷暖房で快適な温度をつくっても、その熱が簡単に逃げてしまえば、冷暖房効率も悪くなります。
一方で、遮熱は特に夏の日射対策として力を発揮します。窓から入る日射や、屋根・外壁が太陽に照らされて受ける熱を抑えることで、室内への熱の侵入を減らすことができます。
つまり、考え方としては、断熱を住宅の基本として、そのうえで必要な場所に遮熱対策を加えるのが分かりやすいでしょう。
特に窓は、夏の日射が入りやすい一方で、冬には日射を取り込んで暖房に利用できる場合があります。そのため、窓については「とにかく遮熱する」のではなく、方位や庇、日射熱取得率なども含めて、夏と冬の両方を考える必要があります。
断熱か遮熱かではなく、「まず断熱。そのうえで、日射の影響が大きいところには遮熱を組み合わせる」。
これが、住宅の暑さ・寒さを考えるときの基本的な考え方です。




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